三位一体の主日 C年

福音=ヨハネ16:12-15


真理の霊が来ると、あなたがたを導いて真理をことごとく悟らせる」(ヨハネ16:13

 イコンの中で、世界的に最も知られているのは、アンドレ・ルブリョフの「三位一体のイコン」だろう(下の画像)。一目見るなり心が引きつけられ、深い感動が呼び起こされる。この15世紀のモスクワの画家は、ロシアの「フラ・アンジェリコ」とも呼ばれている。
 イコンに描かれている「三天使」は「父と子と聖霊」を表す。一般的には、左から父、子、聖霊と言われている。このイコンが呼び起こす深い感動の核心は全体像にある。それぞれの天使の流れるような姿とその三者を結びつける線の静かで平和なことは、まさに「永遠」を感じさせるほどである。
このような見方を招くイコンは、三位一位の秘義に対するアプローチにもヒントを与える。「父・子・聖霊」を一様に対象化して、その違いや関係を分析することにこだわるのではなく、この世の現実の中に現れた救いの出来事を通して、「永遠なるもの」に心を開くことが「三位一体」と呼ばれてきた信仰理解を生きたものにするはずである。
 この種のイコンの題材の元になったのは、アブラハムへの神の現れ(創18:1-8)である。この出来事の記憶をひそませながら、ルブリョフの画は、三天使の中心にエウカリスチアを意味する食卓と聖体容器を置いている。アブラハムとキリストに象徴される救いの歴史、そして主の食卓に養われてきた民の歴史を、この交わりの息吹の中に展望することもできる。
(『ことばとしるし』No.114 1988年5月号に掲載された記事を一部修正して採録)