「行きなさい。わたしはあなたがたを遣わす」(ルカ10:3)
きょうの福音は、七十二人の宣教派遣について語る。ルカ福音書にはこの他に、十二人の派遣(9:1-6)もあり、ルカにとって宣教派遣ということが大事なテーマの一つになっている。きょうの福音では、その宣教派遣のための細かな指示が述べられる。そこには、派遣される七十二人が果たすべき使命と、その使命を完全に果たすための心掛けが示される。使命としてあげられているのは次の四つである。
①「この家に平和があるように」と言いなさい(5節)
②その町の病人をいやしなさい(9節)
③「神の国はあなたがたに近づいた」と言いなさい(9節)
④「神の国が近づいたことを知れ」と言いなさい(11節)
平和は神の国の到来によってもたらされ、病人のいやしは神の国の到来を示すしるしである。そうであれば、七十二人が派遣される目的はただ一つ、「神の国が近づいた」ことを言い広めることであったと言える。しかも、マタイが単に「天の国は近づいた」(10;7)と神の国の時間的接近を語るのに対して、ルカは「神の国はあなたがたに近づいた」と、時間的な近さだけでなく空間的な近さをも強調します。主がもたらす平和を告げ知らせる弟子たちの背後には、主ご自身がおられる-そのような近さなのだ。
派遣された七十二人が行う宣教とは、限られた人たちだけの仕事ではない。それはイエスに従うすべての人の使命であるはずだ。宣教とは、私たちの前を進まれる主に導かれつつ、私たちの背後に主がおられることを人々に感じさせるような働きなのだ。